ベトナムの皆さんと働く時に気をつけていること

似て異なるベトナム

ベトナムと日本は、漢字の文化圏であることや、仏教など、同じアジアの中で共通な所も多いので、日本人としては一緒に働きやすいです。しかし、やはり国が違えば、文化の違いはいろいろあります。今回は、私がベトナムの皆さんと働くときや接する時に気をつけていること、感じていることをご紹介します。

家族が何より大切

第一に、とにかく家族が大事という点です。もちろん日本人も家族は大事にすると思いますが、特に親子の関係で違いを感じます。日本では成人すると、親は子に迷惑をかけないようにするし親元に帰るのもお盆やお正月ぐらいという感じになります。一方のベトナムの皆さんは、親をとても大切にするので、成人した後は親に仕送りなどをするのが当たり前です。つまり、大人になったら親を養うのが当たり前で、子だくさんなら老後は安心という考えが普通です。そのため、少子化問題が深刻な日本とは対照的に、現在のベトナムは平均年齢が31歳。とても若いです。日本の介護制度についてベトナムの皆さんに話をすると、まるで信じられないと言われます。ハノイなどの大都市に住んでいる人たちは、毎週または毎月1~2回はバスなどで何時間もかけて親元に帰るというのも普通です。今はスマホが普及しているので、ほぼ毎日と言って良いほど家族とビデオ通話をしていたりします。ベトナム国内はもちろんですが、日本に来ている皆さんも同様です。通話もずっとつなぎっぱなしで、ビデオ通話をしながら、「ご飯食べたのか?」など、たいしたことを話していなくても、長々と通話しています。家族の悪口で事件になる事もあるぐらい家族が大事なので、ベトナムの皆さんにとってはとにかく家族が大事というのを意識しておく方が良いでしょう。
 

いつも紹介しているベトナム語で、お祝いや別れ際など、たまに会う人に挨拶するとき家族についても一言そえるケースがよくあります。「Em về quê cẩn thận và cho anh gửi lời hỏi thăm gia đình em nhé (気をつけて帰省してね、あなたの家族によろしくお伝え
下さい)」。相手が田舎に帰るときなど、別に相手の家族と面識が無くても、私はこのように言う 事がよくあります。相手はとても喜んで返事をしてくれます。日本にいるベトナムの皆さんはなかなか家族の元に帰ることができません。それはとてもつらい事だと理解
して接することができれば、相手にもいろいろと気持ちが伝わると思います。

話し方で気をつけること

長く話さない。結論や要点を先に話すこ と。接続詞だらけの文章を使わない。相手が日本語を話せる場合でも気をつけていることです。日本語は、曖昧表現になりやすい言語です。相手がある程度日本語を話せる場合、つい当たり前のように日本語を話してしまいがちですが、相手にとっては外国語です。私たちが英語やベトナム語だけで会話するのがつらいのと同様、ずっと外国語でやりとりするのは大変です。メールやメッセージなどでは、辞書で調べる時間がありますが、仕事中の会話ではそうはいきませんし、よく分からなかった単語をいちいちその場で聞けない事もよくあります。意図が上手く伝わっていなくて、失敗につながるということもあります。これは相手のせいだけではありません。相手の日本語能力に全てを依存するのはどうかと思いますし、こちらも伝わりやすい話し方を意識するべきです。会議の後でこっそり「さっきの単語の意味が分かりません。教えて下さい」と聞いてくるとこともあります。会議中は、その場で日本語について聞きづらいというのも当然あるでしょう。もちろん、人によっては意味が分からなかったので説明して下さい、とはっきり言ってくることもあります。
 

日本人は強く主張しないというのが自然なので、相手に命令する感じになる部分を後回しにします。また相手に判断を委ねるので、周辺情報をやたらと入れたがります。つまり直接言わない代わりに、参考情報を並べて、「後はよろしく」と言うわけです。これも文章が長くなって、相手に翻訳の負荷をかける原因です。大事なことやどうする、というのは文の最初に来るべきで、かつ具体的にする方が日本語を翻訳し続けて最後に大事なところが追いつかなくなるといった苦労をさせないで済みます。

どうしても怒らなければいけない時

次に気をつけているのは「みんなの前で叱らない」ことです。これは文化的な背景も関係があり、日本人は「スミマセン」と言う言葉を抵抗なく口にしますが、英語と同様、ベトナム語でも謝罪の言葉を言うというのは自分の非を認める感覚が強いので、日本人から見ると、なかなか謝らないと言う印象を受けることもあります。仕事をしている時、何か相手に強く注意しなければいけない場面に遭遇する事もあります。そういう場合は、相手を別の部屋に呼ぶなどして必ず一対一で話すようにしています。強い注意、つまり叱られることはやはり恥を感じることなので、皆の前でやるというのは気をつけた方が良いでしょう。私が強く注意をしなければいけない時は、必ず会議室などから「Em ơi. Anh có chuyện với em đây (おーい、話がありますよ)」と手招きして呼んでいます。そうすると周りにいる他のメンバーは、「あ、○○さん、怒られる」と思ってニヤニヤしていたり心配顔だったりするのですが、何を言われたのかがみんなには分からなければ、頭をかきながらだったり、苦笑いしながら、またみんなの中に戻っていきます。
 

一対一で話すことで、相手も言いたいことが言えますし、場合によって反論してくることもあります。それが間違っていると思う場合も、しっかり説明することができますし、その反論によって、こちらが誤解していたと分かった場合は普通に謝ります。
 

ベトナムの皆さんと働いていて感じることの1つに、「自分は間違っていない」「自分が正しい」ということに対して強いこだわりがある気がします。最初の頃によく苦労したのは、自分と相手のどちらが正しいかの戦い。なんか勝負の様に捉えられる傾向が強いので、「間違っているからあなたを責めているのではなくて、このやり方や考え方は仕事の上で困る。理由はこう。なのでこうした方がより良くなる。どうですか?」と話すように心がけていました。
 

他にも色々と文化や考え方の違いでの苦労、戸惑うことがありますが、それはまた機会があればご紹介します。ベトナムの皆さんと接する上で、お互いの理解が深まる一助になればうれしいです。

著者

Kaz

プロフィール

1970年生まれ
日系ベトナムIT企業現地採用ITアドバイザー
静岡県浜松出身
ベトナム語独学歴3年半
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【YouTube】https://www.youtube.com/c/ChannelKaz

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