ベトナムのお正月テト

日本ではお正月気分もすっかり抜ける２月、ベトナムでは旧暦のお正月テトを迎えます。旧暦のお正月は西暦から見ると、毎年、日が変わります。２０２４年のテトは２月10日の土曜です。ベトナムのお正月休みは５日間と労働法で決められており、土・日曜や振替休日などを含めて最大で７日間になります。２０２４年のテト休暇は２月８日（木）～２月14日（水）の７連休です。

とても貴重な長期連休

ベトナムは日本と比較すると祝日がとても少なく、テト以外の祝日は１月１の元旦、４月18日のフン王命日、４月30日の南部戦線解放記念日、５月１日のメーデー、９月２～～３日の建国記念日。年間を通してたったの６日しかありません。４月の南部戦線解放記念日とメーデーは、曜日の配列によって４連休になる事がありますが、夏休みもシルバーウィークもありません。そのため、年に一度の長期連休となるテト休みはベトナムの皆さんにとって待ち焦がれた大型連休になります。

家族と過ごすための時間

都会で働いている人たちは、日本と同様に帰省します。ベトナムの皆さんはとにかく家族を大切にします。少子化が進んでいる日本と異なり、子だくさん。大家族で、親戚などを含めて近くに集まって住んでいることも多いですし、とにかく家族を大事にするので、テトに田舎に帰るのはもはや義務のレベルです。最近はお金のある中流層が増加しているため、テト期間に旅行する人たちも増えていますが、まだまだ一般的には田舎に帰って、両親や祖父母、親戚に顔を見せるのがごく当たり前です。周りの知り合いに聞いても、「旅行に行きたいけど、帰らないとものすごく怒られるので、絶対に帰らないといけない」と言う答えが返ってきます。年功序列の意識が強いベトナムでは、親の言う事は絶対です。成人しても変わりません。日本では成人すれば親離れ、子離れとなりますが、ベトナムでは成人すると親を養うという感覚もあり、親戚を含めて強いつながり、目上に対しては絶対の敬意を持って接することが普通です。

都会から帰省する人々は田舎で待つ両親や祖父母、親戚に喜んでもらうために大量のお土産を買って帰ります。日本でも帰省の際にお土産は買って帰りますが、ベトナムはレベルが異なります。日本では信じられないほど大量のお土産を買って帰り、テトの期間は皆で楽しく過ごして一年で貯めたお金をほとんど使い果たしてしまいます。テトが終われば、次のテトを楽しく過ごすために一から頑張って働く、という感じです。そう考えるとテトの終わりはとても切なく感じてしまいますね。

テト中の旅行はおすすめしない

昭和の日本と同様、お店もほとんどが休みになってしまいます。観光地でも観光施設などはお休みで、安くて美味しいストリートフードの屋台なども、まずやっていません。また仮に開いているお店があっても、通常の２倍から３倍のお正月価格になっていることも多いです。ベトナムの皆さんと仲良くなると「テトは楽しいから、ぜひベトナムに遊びに来て下さい」と言われますが、最近の私は「ベトナムの人にとっては楽しいけど、みんな田舎に帰って誰も遊んでくれないよ。外国人にとっては楽しくないよね」と冗談で答えています。物価が高かったり、開いているお店が少ないのがネックですが、ハノイなら外国人の多いホアンキエム湖周りは外国人を目当てにして営業しているお店もありますし、ベトナムの皆さんも日本と同様、初詣に行きますので、お寺の周りは賑やかで大渋滞だったりします。道端で仙人のようなおじいさんが書き初めの手ほどきをしているなんていう光景も見ることができます。もし機会があれば、ベトナムの皆さんが毎年待ち焦がれているテトの雰囲気を、ご自身でも感じてみて下さい。

個人的なオススメはテトの前、旧暦の年末です。町中がそわそわしていて、お正月に飾る桃の花のついた枝や金柑の鉢植えを無理矢理バイクに乗せて運んでいる姿は一見の価値がありますし、ベトナムの活気を最も強く感じられるタイミングでもあります。

ベトナム語で年末年始の挨拶を

ベトナム語で「良いお年を」と言う場合は「Chúc bạn[/anh/chi/em] ăn Tết vui vẻ nhé.」と言ってみて下さい。直訳すると「あなたが楽しくテトを食べる事を祝う」となりますが、「テトを楽しく過ごしてね」と言う意味になります。休み前に、田舎に帰るベトナムの知り合いに「Cho tôi gửi lời hỏi thăm tới gia đình bạn.／ご家族によろしくお伝え下さい」と伝えると、家族を大切にするベトナムの皆さんに喜んでもらえます。また、「新年おめでとう」は「Chúc mừng năm mới.」です。ぜひ覚えて使ってみて下さい