ベトナム人の通話事情

 ベトナムにいると、日本にいるときより他人の着信音を聞く機会が増えます。それだけマナーモード率が低いということで、時に場をわきまえない通話マナーに辟易することもあります。今回はベトナム人の通話事情について書きます。

どんな時にマナーモードにする?

ざっくりと「公共の場ではマナーモード」という感覚は、ベトナムではありません。もっと具体的に着信音が禁止されているような場所で、マナーモードの設定をするといった感じです。例えば映画館や厳かな式典など、音を出せば明らかに周りから顰蹙を買うような場所などが挙げられますが、バスや電車といったところではその対象とはなりません。日本では乗車中に電話がかかってきたら、「降りてからかけ直します」というやり取りが普通ですが、ベトナムでは普通に通話を続けます。これを不快に感じる乗客もいないので成り立つ世界だと言えますし、通話の内容が周りの人に聞かれているとしても特に気にしません。また日本のLINEに当たるZaloの電話着信はみんな同じ着信音なので、公共の場でこの着信が鳴ると周囲の人が一斉に自分の携帯電話を確認し出すという光景が見られます。

固定電話を知らない

ベトナムでは一家に一台固定電話があるという時代を経ずに個人が携帯電話を持つ時代に入っているので、固定電話を使ったことがないという人は珍しくありません。会社で働いて初めて固定電話を触ったというベトナム人も多く、知らない人からの電話対応が恐いという新卒社員もよくいます。この辺りは最近の若い日本人にも通じるところがあり、直接電話で話をするよりも、メッセージやメールのやり取りで済ませるほうが楽だと感じる若い世代が増えています。

通話の声がやかましい

ベトナムにいると「なんでこんな大声で話すんだ?」という声量で電話しているベトナム人を見ることもあるでしょう。一般的には年配の方や地方に行くほどその傾向が強まり、受け手が耳元に電話を当てなくても余裕で聞こえるような音量レベルで話す人もいます。その理由を複数のベトナム人に聞いてみると、以下の共通した理由を挙げていました。・昔は電波が悪かったので大声で話さないと正確に伝わりにくかった時代の名残・田舎ではTPOで声量をコントロールするような環境がそもそもない・元々普段から声が大きい人
 
また興味深い意見として、「恐らく日本人はベトナム人が感じる以上にうるさく感じているのだろう」という話があり、これはベトナム語が分からないので単なる雑音として聞こえていることや、日常が静かすぎる日本の環境という点を指摘していました。確かに日越の騒音に対する苦情を比べても日本のほうがその基準が厳しいのは明らかで、やかましさに対する免疫も低いことがうかがえます。

著者

稲田 琢磨

SESSA VIETNAM CO.,LTD代表

プロフィール

ベトナムで7年ほど人材関連の仕事に従事し、2021年人事コンサルティング会社SESSA VIETNAMを企業。「人材紹介」「人事労務相談」「労働許可書取得代行」などのサービスを中心に企業、求職者向けの人事コンサルティングを展開。
日常でベトナム人を観察しながらベトナムの「なぜ・なに」を考えるのが日課となっている。座右の銘は「為せば成る、なるようになる」
【公式HP】https://www.sessa-jp.com

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